第22章 立待月に焦がれて(政宗)
「うん…。だから…その…そういう時期に、
日吉くんが恋してる…とか、そういうの…
浮ついてるって思われたくないなっていうか…」
そこまで言うと、慌てて政宗を見る。
「あ、でも私はそうは思わないよ?
人を好きになるって、素敵な事だし、自分も強くなれる気がするし…
でも、私の考えはきっと政宗からしたら今でも甘っちょろくて…」
(あぁ…そう言うことか)
「俺が反対すると思ったのか」
「反対…はきっとしないけど、政宗の思いや日吉くんの思いを
ぶれさせてしまうのは違うと思ったから…
だけど、こなっちゃんのことは元気にしたくて…
そのためには、会わないときっと無理だって思ったの」
そこまで一気に話すと、愛は俯いたまま顔をあげられないでいた。
「本当お前は…
あぁ、甘いな。ずんだ餅にはありえないほどの激甘だ」
そう言って俯いている愛の頭を抱き寄せた。
「反対なんかするわけないだろ。それにその位で俺のやり方がぶれるわけ
ない。
だいぶ見くびられたもんだな、俺も」
そう言うと、抱き寄せた頭を優しく撫でる。
「見くびってなんかないよ。
ただ…政宗の邪魔したくなかっただけで…」
「だいたい…好きなやつがいる事は強くなることだって
お前は思ってるんだろう?」
うん…
愛はただ頷く。
「だったら、そのお前の気持ちを貫いていいじゃねぇか。
それに…俺もそう思う。お前がいるから、俺は…」
ー強くいられるー
そう言おうとして、少し迷いが出た。
(本当に俺は…強くいられているのか…)
「政宗…?」
(また……)
さっき感じた政宗の不安そうな声に愛が静かに口を開いた。
「ねぇ、政宗?どうして政宗は…怒ってたの?」
(きっと、答えはここにある)
確信はなかったけど、そう思った。
「俺は…」
(そうだ、なんで俺は…)
「俺はお前が日吉に会いに行ったと…」
「えっ?」
自分でも驚くような素っ頓狂な声が出た。
「な、なんて声出してんだよ…」
「だって…政宗…それで怒ってたんだよね?
私が…日吉くんに会いたくて行ったと思って…」
そうか…そうだったんだ。政宗に内緒にしてたのは、私が日吉くんを…
「わ、悪いかよ…。いや…悪かった…」
そこまで言うと、また胸の奥がわからない痛みに襲われた。