第22章 立待月に焦がれて(政宗)
「凄く会いたかったの…大好きなの…ごめんなさい!」
そう言いながら自分を抱きしめる愛の頭を
愛おしそうな顔で政宗が撫でる。
「そうかそうか。確かにこんなに積極的なところをみると
相当会いたかったんだろうな」
「え?」
その言葉に埋めていた顔を上げれば、政宗の後ろには微笑んでいる女中が二人見えた。
「わわっ、あ…すみません…」
慌てて政宗から身体を離そうとするが、その前にしっかりと抱きとめられた。
「自分から抱きついてきたのに、勝手に離れようとするな」
少し目元を染めながら、ふてくされたような声で政宗が言った。
愛を抱きしめたまま、部屋の奥へと進みゆっくりと座らせる。
すると、その後から女中が御膳を二つ持って入り、
二人の前に置いた。
女中たちが出て行くと、ようやく愛の身体が自由になる。
すっかり顔を赤くしてしまった愛に笑いながら政宗が声をかけた。
「おい、遅かったな」
その声に顔を見上げれば、そこにはいつも通りの余裕そうな政宗の顔。
「身体は温まってそうだな。ほら、腹減ったろう」
そういうと、愛のお膳から箸をとり、手に持たせた。
「え…、う、うん。…あれ?これ…」
愛が御膳に目をやれば、そこに用意されていた料理を見て驚いた声を出す。
「政宗…作ってくれたの?」
すぐにわかった愛に驚きながら
「へぇ、そんなにすぐわかるとは思わなかったな」
政宗はそう答えた。
「わかるよ…」
少し俯いて愛が呟く。
「政宗が作ってくれたものはすぐわかるよ…」
そういうと、いただきますと小さい声で言い、
料理を一口運んだ。
「どうだ?うまいか」
優しく頭を撫でながら、愛に問う。
こくん…
一つ頷くと、しっかりと政宗の顔を見つめた。
「政宗…ごめんね、遅くまで探させちゃって…私…」
そういうと、なぜかまた政宗がムスッとした顔をする。
「飯食ってるときにそんな顔するな。
それに…お前じゃないだろ…」
「え?」
「だから…その…謝るのは…お前じゃないだろ…。
悪かった…な。何も聞かないで…その…」
そういうと、愛の箸を持つ手をそっと掴む。
「大丈夫だったか…手…」
そう言いながら、手首を優しく撫でた。