第22章 立待月に焦がれて(政宗)
あれよあれよと女中に囲まれ、湯殿にまで一緒に入る勢いを
どうにか大丈夫と制した愛は、ぼんやりと湯船につかっていた。
「なんか…なんで、こんな大事になっちゃったんだろう…
ちょっと頭にきて、外に出ただけだったんだけど…」
ふぅ…と息をつくと、今日の自分の行動を振り返る。
「まぁ…ね…」
現代では夜に歩き回るなんて、普通の事に思える事だが、
ここは戦国時代で、危険や死は案外隣り合わせなのだ。
「でもさ…」
急に手首を痛いほど掴まれ、訳もなく怒りをあらわにされたら、
それは腹も立つよ…。
私は…政宗のこと待ってただけなのに、なんで…
ふと、外す暇もなく風呂に入れられた
濡れてしまっている包帯をそっと外した。
ひねると少し痛みがあるものの、赤みはすっかり引いていた。
「すごいな佐助くんは…」
でも、さすがにまずかったよね…。
知らない相手じゃないとはいえ、信長様にとっての敵陣なんだから…
それに、きっと家康が家臣を連れて探してくれてるのは、
山賊とか……そういう人にあってないかって心配したのかな。
秀吉さんは、居なくなったってだけで凄く心配しそうだもんね…
色々思いをめぐらせた挙句、愛はすっかりしょげ返ってしまった。
「あーあ…、今頃、ずんだ餅食べたり、ご飯食べたりして…
政宗の笑顔、見られてた筈だったのになぁ…」
そう呟くと、足取りも重く、湯船を出て行くのだった。