第22章 立待月に焦がれて(政宗)
その頃、必死に愛を探していた政宗の元に家臣が到着した。
『政宗様!』
息を切らしながら政宗を見つけると、そのまま駆け寄り足元に立膝をつく。
「どうした!見つかったか?!」
息を整えるのももどかしく、家臣は政宗を見上げる。
『愛様が…ご自分でお戻りになられました…!』
その報告に、政宗は大きく息をつく。
「そうか…良かった…。急がせて悪かったな」
そういうと、まだ息が上がっている家臣の方にポンと手を置いた。
「悪いが、ここら辺を探している他の奴らにも教えてやってもらえるか?
もう少しお前が落ちついてからでいい」
そう声をかけると、家臣は短く
『はっ!』
と頭を下げた。
御殿に戻ったのなら、今頃女中たちに湯殿に連れていかれている頃だろう。
「それにしても、良かった…」
光秀の報告を受けた時から、愛は佐助のところにいるとは思っていた。
それならば、そう遅くないうちには戻ってくるだろう。
でも、万が一、人攫いに会っていたら…山に入って山賊に襲われていたら…
家康や秀吉の言う可能性をぬぐいきれずにいた政宗は、
ため息混じりに呟いた。
「さて…戻ったって事は機嫌は直っているのか、それとも…」
柄にもなく、心の中では不安が見え隠れする。
それは愛が他の男を見ているのではないか…などという事ではない。
「なんで俺は、あいつを疑うような事を…」
いつも愛がコソコソしているときは、
決まって誰かのためだった。
その行動で裏切られたことなど一度もない。
その度にかえって、可愛く愛おしく思うほどだ。
毎日一緒にいる愛の事は自分が一番わかっている。
簡単に一緒になれたわけではない。
大きすぎる壁を越えて、ようやく一緒になった相手。
「俺以外の奴に目移りさせるわけがない」
それは政宗が持っている絶対的な自信だった。
なのに……
自分の中の変化に戸惑い、そして今柄にもなく不安になっている。
「俺らしくねぇな…。
なんにせよ、あいつの顔を見てからだな」
自嘲するように呟き、政宗は家路へと急いだ。