第22章 立待月に焦がれて(政宗)
見張り台から帰る政宗は、すこぶる機嫌が悪かった。
(あいつ…どういうつもりだ…)
今までに、危険な見張り小屋に愛だけで行く事なんてなかった。
(日吉に会うために…俺に言わなかったっていうのか!)
ー美味しいずんだ餅が作れるようになりたいー
政宗に屈託無くお願いにきた愛の笑顔が今でも鮮明に思いだされる。
(あの笑顔が…俺に向けられてなかったとでも言うのかよ…)
先ほどのずんだの味は、間違いなく自分が教えたものだった。
見栄えも多少悪く、豆の潰し方も少し甘い。
けれど、味を間違えるわけはない。
機嫌の悪いまま、城下をずんずん歩いていく。
途中で茶屋の主人が政宗に声をかけるが
政宗の耳には届かなかった。
「俺に一番に食わせろって言っただろ……」
そう呟く政宗の心のには、怒り以外の何かがざわつく。
「クソっ!」
そのモヤモヤとしたわからない感情が
政宗をより一層不機嫌にさせる。
空は夕暮れにさしかかり、まだ明るい空には月が昇り始める。
けれど、その情緒に浸る余裕は今の政宗には全くなかった。