第22章 立待月に焦がれて(政宗)
小夏と別れた愛は、そのまま御殿に帰り、台所に直行していた。
「小夏ちゃん嬉しそうだったな。
日吉さんも美味しそうに頬張ってたし。
さて…私も政宗先生に腕前披露しなきゃね!
ふふ…でも、一番最初がこなっちゃんだったのは内緒にしておこう」
ご機嫌で独り言を呟きながら、政宗のためにせっせと教えてもらったずんだ餅を作りはじめた。
(でも、こなっちゃんに食べてもらったのは味見だけど…
政宗に作るのはいーっぱい愛情込めちゃうもんね …♪)
鼻歌交じりで手を動かす様子を、御殿の女中たちが笑顔で見つめていた。
『ふふ…教えてあげるんだって毎日頑張ってらっしゃったけど、あれは…』
『ええ、本当はご自分で政宗さまに作って差し上げるためだったのね 』
女中たちのひそひそ声も愛には届かないくらい、夢中になって作っていく。
しばらくして……
「できたー!」
一際大きな声をあげ、すぐにキョロキョロとあたりを見回す。
(よかった…誰もいない…)
一人で頬を染め、恥ずかしそうに小ぶりな重につめる。
それは、いつも政宗が愛のためだけに作るときに使う可愛らしい重だ。
城下で見つけてきたというそれは、月見をする兎が描かれた漆の重で、
一目みて愛が喜ぶ姿が浮かび、政宗が買ってきたものだった。
「これに入れてあげるの、夢だったんだよね…。
ふふ…今までで一番うまくできたし、喜んでくれるかな♡」
きれいに餅を詰め込むと、バレないように自室に持ち帰る。
(政宗が帰ってくるの楽しみだな…)
丁寧に刺繍をした風呂敷にお重を包んだ。
綺麗に結び終わると、お重と同じ月と兎の刺繍を指でなぞる。
「このお礼も喜んでくれるかな…」
そう呟くと、そわそわと縁側に立ち空を見上げる。
(早く政宗に会いたい…。日吉君とこなっちゃんの事も伝えたい。
良い伴侶を見つけろって言ってたし、絶対喜ぶと思うんだよね…)
夕暮れにはまだ少しありそうだ。
「流石に…こんな時間じゃ月もまだ昇らないよね…」
そう呟くと、我慢しきれず玄関でそわそわする。
そんな愛の姿を女中たちは微笑ましく見守るのだった。