第22章 立待月に焦がれて(政宗)
政宗が見張り小屋へ向かうと、針小部屋は微妙な空気に包まれていた。
あからさまに動揺している小夏と、小夏を心配するみんなの表情が
愛にはいたたまれない。
『ま、まぁ危ないって言っても、最近は戦の話は出てないしねぇ』
千春が小夏を元気づけようと明るく声を出す。
『そうよね、きっと政宗様もこの時期を選ばれたのではないかしら』
佐江も千春に合わせる。
(こなっちゃん…)
けれど、そんな気休めでは小夏が安心しない事は愛には手に取るようにわかる。
(そうだ…!)
「ねぇ、こなっちゃん、この後時間ある?
今日は早く終わりそうだし、また城下へ一緒に行ってみない?」
『え?…はい、特に用事はございませんが…』
『そうね、今日は天気もいいし、行ってらっしゃいよこなっちゃん』
愛の優しさを感じて針子達は小夏を促した。
城下を二人で並んで歩く。
けれど、前のように元気な小夏の姿はそこにはない。
「ねぇ?少し休もうか。お茶屋さんのご主人に新しいお団子食べに来てって言われてたんだ」
愛は努めて明るく振る舞い、小夏を半ば強引にお茶屋さんに引き込んだ。
『おお、これは愛様、早速来てくださったんですね』
茶屋お主人は愛想の良い笑顔で話しかける。
「はい!新作のおだんご頂にきました」
そう言うと、奥の席に二人で座る。
『そうなんですよ、実は政宗様に助言を頂きまして、こちらを作ってみたんです』
そう言って出してきたのは、
「え?ずんだ餅ですか?」
綺麗な黄緑色の餡をふわっと纏ったずんだ餅だった。
「美味しそうですね、こなっちゃんも地元の味でしょ?」
『はい!まさか安土で頂けるなんて思いませんでした!』
目の前に出された懐かしい団子に、さすがの小夏も声を弾ませた。
「そうだよね、うちではいつも政宗が作ってくれるし、日吉君も…あ!そうだ!」
愛は急に思い立ったように目を輝かせた。
「日吉君もずんだ餅好物って言ってたよ。
今度、一緒に作って差し入れ持っていかない?」
『え?でも、お恥ずかしながら私自分で作った事はなくて…』
料理はあまりしなかったと言う小夏に愛は自信たっぷりに言う。
「大丈夫!私が政宗から教わっておくから」
そう言うと、小夏もそれなら、と力強く頷いた。