第22章 立待月に焦がれて(政宗)
それからと言うもの、政宗が針子部屋に用があると聞けば、
日吉は率先してその役を買って出た。
その度に政宗は気にくわない気持ちになる。
「お前なぁ。俺の楽しみ取るんじゃねぇ」
『いえ、そんなつもりは…
政宗様がお忙しいかと…』
だいたいその申し出は二回に一回は却下される。
針子部屋では、今日はどちらが差し入れを持ってくるかと、
佐江と千春が賭けをし出す程だった。
『あ〜今日は政宗様か〜。
佐江さん連勝中だ〜』
千春が小言を言いながらお茶の支度をする。
負けた方がお茶を淹れる当番になるという可愛らしい賭けをしてるとも知らず、
政宗は、
「俺が来ちゃ悪いか?」
と、ヘソを曲げてしまう。
そんな政宗を見ながら、小夏はクスクスと笑っている。
「こなっちゃん…」
愛が慌てて小夏を制す。
『すみません…。でも政宗様は本当に愛様を愛していらっしゃるんだなって』
その言葉を聞くと、政宗はすぐに機嫌を直す。
「当たり前だ。俺ほど愛を愛してる奴はいない」
そうニヤリと笑いながら愛の腰を引き寄せる。
『ほんと、そのおかげでこうやって美味しいおやつを頂けて
私たちは幸せ者だわ』
佐江も楽しそうに笑っている。
小夏は、日吉が来ない事少しばかり残念に思いながらも、
こうやって毎日楽しく仕事が出来る事が嬉しくて仕方なかった。
(私も…好きな人になにかしてあげられたらいいんだけど…
って!好きな人って!)
自分がそう思いながら日吉の事を思い出していることにハッとする。
(そっか…私、日吉さんが好きなのかな…)
「こなっちゃん、どうかした?」
一人で首を振ったり、赤くなったりする小夏に気づき、
愛は心配そうに声をかける。
『い、いえ!
こんな美味しいお饅頭、私も作れるようになりたいなって思っただけです!』
小夏は慌ててそう言う事が精一杯だった。