第3章 彼と私の秘密の言葉(三成)
政宗とのお茶の時間を終えると、
『後はもう俺だけでもすぐ終わるから、
愛は政宗と城に戻っていいぞ。』
と秀吉が言ってくれた。
このまま居ても、三成は来なそうだし…と、
愛は秀吉に甘えることにした。
(やっぱりちょっと疲れてるのかな…)
秀吉に、「ありがとう」と伝えると、
そのまま政宗に送られて帰ることにした。
「政宗も、ありがとね。
何にも食べたくないって思ったけど、やっぱり政宗の料理は美味しいね!」
そう言うと、むぎゅっと鼻を摘まれる。
「いひゃいよ…」
『明日は、夕餉を俺が作るから、それまでに元気になっておけよ?
お前が沢山食べてくれないと、張り合いがない。』
そう言って鼻から指を離す。
「うん…そうだね。今日はすぐ休むよ。」
(一晩寝れば復活するよね)
政宗に自室まで送ってもらい、女中に湯浴みをしたい旨を伝え、
1人の部屋で足を伸ばす。
(埃っぽかったからお風呂は入りたいけど、なんか怠いな…。
もしかして風邪ひいたかもな…)
湯浴みに行く際、女中には夕餉は要らないと伝えておいた。
まだ陽も落ちきっていないが、愛は褥に潜り込む。
この数日の疲労と、少しの具合悪さから、すぐに眠りに落ちた。
「う…ん……みつ…なりくん…」
『はぁ…。折角様子見に来てあげたのに…』
愛は、夜になって熱を出した。
家康が様子を見にきた時には、額に脂汗を浮かせて苦しんでいるところだった。
女中に桶と手拭いを用意させ、自室から薬を調合して再び訪れた。
人の気配を無意識に感じているのだろうが、
さっきから愛は、熱に冒されながらひたすらに
三成を呼んでいるのだ。
額の汗を拭きながら、家康はため息を連発していた。
(よりによって、一番気にくわない名前…)
薬を飲ませようと、呼びかける。
『愛少しだけ起きて、薬飲もう。』
しかし、息があがったまま、意識がハッキリしない。
もう少し様子をみようかと思っていると、
外をバタバタと走る足音が聞こえてくる。
(来たか…)
「愛様!!」
襖を開けると同時に大きな声で愛を呼ぶのは三成だ。
『ちょっと、病人の前でうるさい』
そう言いながら三成を落ち着かせる。
「家康様、連絡ありがとうございます。」