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イケメン戦国★センチメンタルLOVE

第22章 立待月に焦がれて(政宗)


『愛様…ほんと宜しいのでしょうか…』


小夏はもう何度目かの同じ質問を愛にしている。
その度に愛は、


「全く問題ないから。でもこなっちゃんがそんなに気にするなら…」


『いえ!本当に嬉しいんです!嬉しいんですけど…緊張してしまって…』


行商との立ち話を終えると、愛は小夏を馴染みの反物屋へ案内した。
そこに並ぶ素晴らしい生地に、小夏は目を輝かせて喜んだ。


『まるで、愛様が初めていらした時のようですね』


反物屋の主人も微笑ましく目を細める。


「私あんなにはしゃいでましたか?」

愛も小夏を見る目はどこまでも優しかった。


『愛様!どれもこれも素敵な品ばかりです!
私、いつか必ずここで生地を買って着物を作れるように頑張ります!』


安土に来て浅い小夏には、まだ反物屋で生地が買えるほどの余裕はなかった。


『その時は、ぜひあの刺繍を教えて下さい』


期待に満ちた目で言う小夏に、愛は自分が安土に来て間もない頃を重ねていた。


何もかもが不安だった時に無理矢理政宗に連れられて城下を巡った。
その後、三成は勉強のためとお金を持たせて城下を楽しむように勧めてくれた。


(私がお小遣いあげるわけにはいかないけど…そうだ!)


「こなっちゃん、この後うちにこない?
是非見せたい物があるの」


『え?愛様のご自宅ですか?
それって…政宗様の御殿と言う事ですか?!』


「まぁ…そうなるけど…やだ?」


『まさか!でも、私なんかがお伺いして宜しいんでしょうか…』


「もちろんだよ!友達の家に遊びに行くようなものでしょ?」


『友達なんて…そんな畏れ多いです!』


すっかり恐縮しきっている小夏の手を、愛は優しく握る。


「私はこなっちゃんを友達…というより、妹みたいって思ってるよ」


『え…。愛様…』


驚いて声を出せずにいる小夏に、


「だから、もっと気軽に接して欲しいかな」


そう笑いかける。


小夏は感激のあまり、目に薄っすら涙さえ浮かべている。


「さぁ行こうか」


『はい!』


反物屋の主人はそのやりとりを、心底微笑ましく眺めているのだった。
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