第22章 立待月に焦がれて(政宗)
日吉の歓迎会は和やかに進み、夜更けに終わった小さな宴の後
秀吉と三成はそれぞれの御殿へと帰って行った。
日吉もあてがわれた部屋へと戻っている。
「政宗の思った通り、日吉くんと三成くんはすっかり意気投合してたね」
寝支度を整えた部屋で、愛が嬉しそうに政宗に言う。
『あぁ。あいつはあれだけの力量がありながら、
すっかり埋もれた生活をしてきた。三成の働きを間近で見られれば
いずれ三成のように頭角をあらわすに違いない』
政宗も穏やかに話す。
「なんだか一日で一気に弟と妹ができちゃったな」
『妹?』
「うん。今日ね、新しい針子の子が来たの。
小夏ちゃんて言うんだけど…あれ?そう言えば日吉くん、
奥州の近くのお城に居たんだよね?」
『あぁそうだ。俺と秀吉が先日潰した大名のところにいた』
しばらく考えたような愛がゆっくり口を開く。
「もしかしたら、こなっちゃんも、同じお城にいたかも…」
『そうなのか?』
「うん。奥州の少し西側って言ってたから。
そこでは酷い扱いをされてたみたいだけど…」
小夏の話を思い出し、愛は表情を曇らせた。
『もしあそこに居たんだとしたら、苦労しただろうな』
「日吉くんも、こなっちゃんもいい子なのに…」
二人の過去を思って愛は胸を痛める。
『ほら、こっちこい』
そう言うと政宗はあぐらをかいた自分の膝をポンポンと叩く。
黙って近づく愛を呼び寄せると、
その腕の中にギュッと抱きしめる。
『お前は優しすぎる』
そう言う政宗の声はとても優しい。
『だけど、お前はそれでいい』
腕の力を緩めると、触れるだけの口づけを落とす。
「ん…政宗…」
『これからの未来が日吉にとって価値あるものになるようにしてやる。
お前も、小夏が笑っていられる場所を作ってやればいい』
「そうだね。過去は変えられないけど、
明日は素敵な日にできるように、私も助けたいな」
はにかむような笑みをこぼす愛を政宗はもう一度抱きしめた。
『お前ならできる。俺がこんなに幸せな毎日を貰えてるんだからな』
そう言うと今度は吐息ごと丸呑みにするような口付けをする。
優しさと甘さに包まれて、夜は深みを増して行くのだった。