第22章 立待月に焦がれて(政宗)
『お邪魔します』
ちょうど頃合い良く三成の声がする。
「あ、噂をすれば、だね。はーい」
愛が小走りに襖に駆け寄る。
襖をあければ、三成と秀吉の姿があった。
「どうぞ入ってください」
『愛、顔見るの久しぶりだな。
元気にしてたか?』
秀吉はそう言うと、愛の頭をポンポンと軽く叩く。
「うん、この通り元気だよ!」
愛も嬉しそうに秀吉に笑いかける。
『おい、秀吉、気安く愛に触るな』
政宗がすかさず声をかけた。
『相変わらず大事にされてるようで何よりだな』
秀吉が笑いながら政宗の近くに座る。
『は、初めまして。秀吉様、石田様。
日吉にございます』
二人が座ると、日吉が緊張感のある声で挨拶をする。
『お、お前が政宗の右腕候補の日吉か。
とても好感の持てる青年じゃないか。こちらこそ宜しくな』
秀吉が柔らかく笑う。
『はじめまして、日吉殿。石田三成です。
そんな畏まらないで下さいね』
三成もキラキラのエンジェルスマイルで笑いかける。
「ね?日吉くん、二人ともとっても強くて、とっても優しいから安心して?」
愛も日吉に笑いかけた。
『愛様は、日吉殿を日吉くんとお呼びなのですか?』
三成が笑顔を収めて愛に聞く。
「うん…そうだけど、どうかした?」
『いえ…』
目をそらす三成に政宗が笑って言う。
『そうか、今まで、安土で君付けはお前だけだったもんな。
専売特許とられたな、三成』
政宗が堪えきれず肩を揺らす。
『そ、そう言うわけでは…』
複雑そうな三成に秀吉が呆れたように
『呼び方なんてどうでもいいだろう。
政宗、今日は世話になる』
と口を挟んだ。
『あぁ、日吉と仲良くしてやってくれ。
特に三成、こいつはお前と同じように算術や知識に長けている。
まだまだ勉強しなければならない事はあるが、目をかけてやってほしい』
政宗が言えば、
「そう!きっと三成くんと話が合うと思うよ。
日吉くん、本も大好きだって」
愛も三成に言う。
『そうですか!それは素晴らしいですね。
宜しくお願いします』
三成は先程の表情をすっかり笑顔にかえて再び日吉に向かった。