第22章 立待月に焦がれて(政宗)
その日の夜、政宗が言っていたように、
愛が御殿に帰ると、台所では政宗が夕餉の準備をしていた。
「政宗、ただいま。何かお手伝いしようか?」
政宗は鍋の手を止めて振り返る。
『お、早かったな。こっちは大丈夫だ」
近づいてくる愛の頭を優しく撫でながら政宗言う。
『ふっ…』
急に笑みをこぼす政宗に愛は胸がドキッと鳴った。
「な、なに…」
『いや、お前はホント、俺にこうして撫でられるのが好きだな、と思っただけだ。
顎を撫でられてる照月みたいな顔してる』
「し、照月と一緒にしないでよ…」
そう言いながらも、こうして優しく触れられる事を
嫌だとは思わない。
『拗ねた顔も可愛いんだから、お手上げだな…』
少し口を尖らせた愛の唇をすかさず攫う。
『もうすぐ終わるから、いい子で待ってろ。
そうだ、俺の部屋に日吉がいるから、これ食って待ってろ』
そういうと、政宗はいつもより小さめに作られたずんだ餅の入った皿を取る。
「わ、いつもより可愛いね」
『あぁ、食事の前に腹いっぱいにされても困るからな。
日吉の好物らしい。今日は緊張してたようだから、茶でも淹れてやってくれ』
お皿を受け取ると、愛は笑顔で頷く。
「うん。私も甘いの食べたかったんだ。
政宗のずんだ餅食べたら、日吉さんもう他が食べられなくなっちゃうね!」
そう言ってふにゃりと笑う愛を見つめ、政宗は少し眉を顰める。
「どうしたの?」
キョトンと小首を傾げる愛が不思議そうに聞く。
『お前、その可愛い笑い方、あいつの前ではするなよ』
真剣な顔で言う政宗に胸がキュンとなる。
「もしかして、ヤキモ…」
『ほら、早く行け!』
全部言い終わる前に背中を押される。
「はいはい。楽しみに待ってるね!」
そう言い踵を返しながら、愛は幸せに浸りながら廊下を歩くのだった。