第21章 月と金星 (秀吉)
オマケ1
『謙信様が俺と一緒に来たのは、
秀吉さんが手こずっているのを知ってたからじゃないんですか?』
帰りの道中、佐助はおもむろに切り出した。
「何の話だ。俺は退屈しのぎに出向いたまでだ」
『そうですか』
(ここでしつこく訊くと、機嫌が悪くなるな…)
「ところで、秀吉さんと愛さんは、上手くやってますかね」
『、、、。佐助』
「はい?」
『お前は、後悔はないのか』
「なんです?急に」
『俺の命を救った事、後悔はしてないか』
佐助が驚き、後ろを振り向くと、
謙信は馬上で、憂いを帯びた目をしていた。
「謙信様を救った事だけでなく、
俺は常に後悔のないように生きているつもりです。
一度しかない人生ですからね。
だから、俺は謙信様にずっとついて行く事を決めました」
『そうか…。佐助、戻るぞ』
「えっ?何処へですか?
もう春日山には着きますよ?」
『秀吉の所に決まってるだろ。
やはり、格好の獲物が目の前に居たのに、
切らずに帰っては悔いが残る』
そう言うが早いか、馬の向きを変えると、
颯爽と走り出す。
「ちょっと!謙信様!ダメ!絶対っ!!」
慌てて佐助も追いかける。
『俺も後悔しない生き方をしているのだ。止めてくれるな』
「今止めないと、俺が後悔するんで全力で止めます!!」
後世、上杉謙信と、その右腕と呼ばれた男は、
全力で馬を走り回す程、仲が良かったと書かれているとかいないとか…
オマケ1 終