第21章 月と金星 (秀吉)
「秀吉さん…ホント…なの?」
佐助に背中を押され、半ば転がるように秀吉の前に愛が現れる。
『愛…?ホンモノ…か?』
お互いに違う意味で唖然とする。
『あー。秀吉、悪かったな。
ちょっと俺が、お前を懲らしめようとだな…』
政宗が痺れを切らして口を挟む。
『良かった…良かった!』
政宗の声をかき消すように、秀吉の声が響いた。
いつもは冷静な秀吉が、周囲に構わず愛を掻き抱いた。
そして、何度も何度も口を突いてでる言葉は
『良かった…』
きつく抱きしめられても、まだ愛は秀吉の言葉に実感が湧かない。
(だって秀吉さん、私と結婚するつもりは無いって…)
「秀吉さん…苦しい…」
力一杯抱きしめられている事に気づく。
『あぁ、悪かった…大丈夫か?
お前本物だな。何処にも行ってないな?
どこも…怪我してないか?』
少し身体を話してまじまじと愛の身体を眺める。
「大丈夫だよ…。
秀吉さんに会えるってなったら、透明じゃなくなったの。
政宗が全部知ってる…」
『あぁ。安土を出るときは、もう殆ど気配しかなかった』
『そうか…悪かった。何も気づいてやれなくて…。
でも本当に良かった。此処に来てくれてありがとう』