• テキストサイズ

イケメン戦国★センチメンタルLOVE

第21章 月と金星 (秀吉)


『愛、大丈夫か?少し休むか』


馬の速度を緩めると、政宗が自分の中の温もりに話しかける。


『ん?お前、さっきよりも見えるな』


その言葉に愛は手綱を握る自分の手に目をやる。


「ほんとだ…何でだろう?」


不思議そうに眺めている愛を、政宗は面白そうに見下ろす。


『気づいてないのか?お前自分で言ってたろ。
秀吉が家に帰ってくると、透けないって』


「あっ…」


いつもは秀吉が自分の元へ帰ってくるのを待って居たが、
今は自分が秀吉に近づいているんだと改めて気づく。


『やっぱり、信長様の養女になったくらいじゃ駄目なんだな』


政宗は内心ホッとして、そう笑いかけた。

絶対に消えさせない自信はあったが、
それが根拠のないものだと言うことも分かっていた。
だから、今こうして、少しずつ秀吉に近づくたびに姿を取り戻す愛に、
安心するなという方が無理な話だ。


『あと半日くらい走れば到着するだろう。
少し降りるか』


川沿いの木に馬を括り付け、愛を降ろす。


「ごめんね、政宗も疲れたでしょ。
殆ど走りっぱなしだもんね。ありがとう」


『気にするな。嫌だったら最初から頼まれない。
お前が一緒だと、面白い事しか起きないからな』


そう言うと、竹筒に新しい水を汲んで愛に渡す。

この時代に来た時は、山で湧き水を飲むなんて…と抵抗があったのが懐かしい。
今では普通に美味しく飲める。思えば色々なことに慣れて来たのだと実感する。



「冷たくて美味しい。ありがとう政宗」

ニッコリ笑って礼を言う愛の顔は、
最早ハッキリと認識できる。


『ははっ。やっぱりお前はそうやって無理せず笑ってる顔が可愛い』


そう言うと、愛の頬をむぎゅっと掴んだ。


「いたっ!もう!私のありがとう返してよ!」

今しがたつねられた頬をぷくーっと膨らまし口を尖らせる。

『お前の百面相が見れなくなるとつまらないからな。
居なくなってもらっちゃ困るんだよ』

憎まれ口の中に見える優しさに、愛は心が温かくなるのを感じていた。
/ 773ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp