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イケメン戦国★センチメンタルLOVE

第21章 月と金星 (秀吉)


秀吉が居なくなると、愛は荷物をまとめるために御殿に戻る。



きっと、何事も無かったように〈当たり前の日常〉を過ごせたはずだ。
いつまでも続くような、何のことはない日々を過ごせただろうか。



信長が自分を娘にしてもいいと聞いたあの日から、
ずっと考えていた。

秀吉がそばにいない間に、そっと消えてしまうのはやめよう、と。


こっそりと、信長にだけ話を通していた事がある。
秀吉が出発してから、安土城に戻りたいと言う事を。


荷物をまとめ終わると、女中には、
暫く安土城内での仕事が続くので、城に寝泊まりすると伝えた。


玄関までくると、政宗が立っていた。


「どうしたの?政宗」


キョトンとした顔で疑問を投げかけると、


『迎えに来てやったんだよ。安土城のお姫様を』


と、政宗が笑った。



『ほら、荷物よこせ』



愛は素直に、


「ありがとう」


と告げると、一緒に歩き出した。



安土城までの短い道のりを政宗と並んで歩く。



『良かったのか?』


「何が?」


『何がって、秀吉だろう』


「いいも悪いもないでしょ?
楽しく過ごせたし、やっぱり大好きって思えたよ」



そう言う愛は、とても幸せそうに笑った。



『そうか。まぁ、お前が好きなように過ごしたなら、
それでいいけどな。また本当の気持ち隠して笑ってたなら…』


政宗の言葉を遮るように、


「わかんないよ。まだ此処にいるから。
もしかしたら、秀吉さんが帰ってくるまでいるかもでしょ?
その時が来なきゃわからない。
悲しくなるのは、そのあとでしょ。そしたら、向こうで一杯泣きます」



そう言って、笑う愛の気持ちがどこにあるのか、
政宗には、分かる由もなかった。
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