第21章 月と金星 (秀吉)
『おい、愛、これどうだ?』
「・・・・」
『おい!聞いてんのか?味見しろって言ってんだ』
ポカッと軽く小突かれて、
愛はハッと我に返る。
「え?味見?うわっあちっ…」
『なーにやってんだ…お前気もそぞろ過ぎるだろう…』
「ごめん…。うん、美味しいよ!多分…」
煮物の出汁を一口すすり、曖昧な返事をする。
『何だよ多分て!』
「ごめん…なんか緊張して味がよくわからない…」
申し訳なさそうな顔をする愛に、政宗は小さくため息を着く。
『まぁ、確かにな…。俺も気になってはいる。
よし、ちょっと偵察に行くか』
そう言うと、愛の手首を掴み歩き出そうとする。
「ちょ、ちょっと、ダメだよ!
てかやだよ!聞きたくない!」
そう言うと政宗の手を振りほどき、両耳を抑える。
『気になってんだろ?
ちょっとだけ様子見るだけだ。来いって!』
そう言うと、無理矢理もう一度手首を掴む。
『そういえば、今日も大丈夫そうなんだな』
掴んだ手首を見つめながら政宗が言う。
「うん…て言うか、一人の時以外なった事ないの。
だから、ずっと目がおかしいって思ってたくらいで…。
最近も、運がいい事に秀吉さんが帰って来ると治るんだよね」
『そうか…。まぁいい。いくぞ』
「ちょちょちょっと、政宗!」
愛はひきづられる様に台所を後にした。
『お前、音立てるなよ?あいつらただでさえ勘がいいんだから』
小声で政宗が囁く。
「政宗こそ、転んだりしないでよっ」
『するか馬鹿。お前じゃあるまいし』
「ちょっと!」
『しっ!』
二人は光秀の部屋の前で息を潜める。