第21章 月と金星 (秀吉)
『いいから任せておけ』
そんな光秀に、結局は押し負かされてしまった。
ただし、自分が消えてしまうかもしれない事は絶対に言わないで欲しいと約束させた。
もし、そんな事を秀吉が知ってしまったら、そうするつもりが無くても、
無理にでも祝言をあげると言い出しかねない。
それだけは避けたかった。
その後、準備があると、光秀は出かけてしまい、
愛は無理やり御殿へと帰された。
「光秀さんには感謝してるけど…
でも、強引過ぎるよ…嫌な予感しかしない…」
部屋に着いた途端にどっと疲れが出て、褥へ突っ伏した。
そして、佐助の話を思い出す。
「謙信様は、本当に佐助君の事、
大事にしてくれてるんだな…良かった」
命を救った責任を取れ。
この先全ての戦に名を刻め。
謙信らしい言い方、愛の込め方に、胸が暖かくなるのを感じる。
(私とは別な時代で生きることになっても、
佐助君はきっと生涯幸せなんだろうな)
幼馴染の佐助が、今はとっても遠い存在に感じられる。
誇らしいような、寂しいような…
色々な気持ちがせわしなく押し寄せてくる。
そして、いつのまにか、愛は日々の寝不足も祟り、
深い眠りへと吸い込まれていった。