第21章 月と金星 (秀吉)
全てを報告し、愛はふぅーと大きく息をついた。
(泣かなかった…)
『成る程。解決策がわかってよかったな』
「へ?」
光秀からそのような言葉が来るとは思わず、
つい腑抜けた返事をしてしまった。
『何を迷っている暇があるんだ。
さっさと祝言をあげれば良い事だろう』
光秀は、もっと深刻な結末を想像していただけに、
愛からの報告は拍子抜けをするくらいだった。
「あ、あの…光秀さん?
そんな簡単な事ではないですよね?」
『なぜだ。お前は秀吉の妻に成る程は好いていないのか?』
「いやいやいや…あのぉ。
私、豊臣秀吉の妻になれるほどの家柄でもないですし…」
『何を言っている。お前は織田家ゆかりの姫だろうが』
「百歩…いや、一万歩譲ってそうだったとして、
そもそも…秀吉さんにその気が無かったら無理じゃないですか…」
『今までにそのような話は出ていないのか?』
「出てたら…もっと意気揚々と帰って来ますよ、私だって…」
光秀は暫く考えるように黙っていたが、ニヤリと口元を緩めると、
『それならば、本人に聞いてみればいいだけのことだな』
「は?え?何言ってるんですか?」
『何か不満か?』
「不満とかそういう事じゃないですよ!
そんなの聞けるわけないじゃないですか!」
愛は半ば呆れて光秀見つめている。
『お前が聞けないなら、俺が聞いてやる。
それで文句はないだろ』
「大アリですって!絶対駄目ですよ!」