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イケメン戦国★センチメンタルLOVE

第21章 月と金星 (秀吉)


自分の部屋に戻ると、愛はどっと疲れが出た。
緊張したり、がっかりしたり、身体の疲れというよりは、
心の疲れのようだった。


「お茶でも入れようかな…」


湯呑みを取ろうとした手を目にして愛はギョッとする。


「きゃあっ!」


『愛様、どうされましたか?!』

つい大きな声を出してしまった愛を心配して、
外から女中の声がかかる。


「す、すみません大丈夫です。
ちょっと湯呑みを落としてしまっただけなので…」


襖が開いて、声の主が顔を出す。



『火傷などございませんか?』


「まだ…お湯は入れてないので大丈夫です、
気にしないで下さい」


『え?そうですか…なら良かったですが…。
何かあったらすぐ呼んでくださいね』


怪訝な顔で女中が襖を閉める。


『あら、光秀様、秀吉様はまだお城ですよ?』


襖の向こうから聞こえる声に、愛は慌てて湯呑みを拾った。


『入るぞ』


そこには、さっきまで話をしていた光秀が訪ねてきていた。


「光秀さん…さっきはすみませんでした。
何か、他に用がありましたか?すみません聞かずに出てきてしまって…」



光秀は普通を取り戻そうとする愛を見下ろすと、


『今、何があった』

と訊いた。


「あ、えっと…湯呑みを落としてしまって、
びっくりして声を上げてしまったので…」


『湯も入っていない器を転がしただけでか?』


「はい…ちょっとボーッとしてて…アハハ…
光秀さんにもお茶いれますね」


そう言うと、もう一度自分の手元をみる。
さっきは完全に透けていた指先は、今はしっかり見えていた。


「それで、ご用はなんでしたか?」


お茶を出しながら愛が言う。


『お前の用が済んでないのに、いなくなるからだろう』


お茶をすすりながら、涼しい顔で光秀が言う。


「え?」


『間に合わなくなるのだろ?
俺は理由次第と言ったはずだ。聞かせてもらおうか』



愛は少し考えた後に口を開く。



「絶対に他の人には言わないで貰えますか…」


『事と次第によるがな』


光秀の言葉に、愛は覚悟を決め、話し出した。





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