第20章 貴方への愛を紡ぐ日(家康)
「これ…家康へのバレンタインのプレゼント」
恥ずかしそうに愛が包みを全て解く。
『これ…着物?この前作ってもらったばっかなのに』
「うん。でも、これは特別。
これは…戦に行くときに甲冑の中に着てもらう用…」
『えっ?』
家康が目を見開き、驚きながらその着物を広げる。
「私は…戦さ場で命をかける家康に何もしてあげられないけど、
これを着て貰えたら…少しでも私も守れるかなって…。
家康はいつも私の事守ってくれるから」
その言葉に、家康は泣き出したい気持ちになった。
(なにこれ…こんなの…)
「家康?」
何かを堪えるように黙り込む家康に、愛が心配そうに声をかける。
『馬鹿な愛…
俺は…いつも愛に守られてる。
鎧にも守れないもの、守ってもらってる…』
掠れた声でそう言うと、顔を見られないように愛をギュッと抱きしめて
その肩に顔を埋めた。
「家康…?泣いてるの?」
『泣くわけないでしょ…あんたじゃないんだから…』
そう言うと、更に腕の力が込められた。
(どうして、涙が出るんだ。
こんなに嬉しくて…あったかくて…胸が痛い…)
愛は黙って家康の背中をさする。
優しく優しく、全ての憂いが家康から無くなればいいと思いながら。
ーーあんたは何もわかってない。
俺の心は愛にしか守れない。どんなに厳しい戦さ場にいても、
俺を守ってるのは、あんただけなんだから…ーー
『ばれんたいんのお返しは、ほわいとでーでしょ?』
愛を抱きしめながらくぐもった声が聞こえる。
「うん。そうだけど、気にしないでね」
『気にしないわけない。俺をこんなにしたんだから、覚悟してよ…』
そう言うと、抱きしめていた腕を緩め、すかさず愛に少し乱暴に口付ける。
「ん…いえやす…」
『その前に…今からも覚悟してよね。
今日は絶対寝かさないから…』
たった一日すれ違った気持ち。
それを埋め合うように、いつまでもいつまでも、熱を分け合い溶かし合う。
愛を紡ぐ日の甘さは終わる事がない。
今日が終わっても、ずっとずっと…。
貴方への愛を紡ぐ日 終