第20章 貴方への愛を紡ぐ日(家康)
『落ち着いた?』
家康はしばらく言葉もなく、愛が落ち着くのを待っていた。
「うん…家康、ありがとう、みんなに渡してくれたんだね」
そう言うと、腕の中の愛が漸く顔を上げる。
『だって、あんたが一生懸命作ったものだから…』
「みんなの手紙、家康も聞いたの?」
『うん…。本当に、どこまで愛の事好きにならせたら気がすむの?』
そう言うと、家康は優しく微笑み、愛の頬に残った涙を拭う。
『それ…』
家康は愛の手に握られた、自分の着物を着た人形を見る。
『あんたが持ってたんだ…よかった』
「え?」
『俺のだけ…無かったから』
そう言うと、目元を赤く染めて呟く。
「これは私が持ってて、家康には…」
そう言う愛の唇をそっと人差し指で抑えると、
微笑みながら自分の懐から人形を取り出す。
「わぁ…持っててくれたの?」
家康は何も言わずに笑顔で頷く。
『ねぇ、なんで俺たちのだけ、この持ってるやつ赤いの?
他の人のは着物の色に似てたけど…』
「これはね、ハート。心臓と同じ形でね、私たちの時代では愛を表す記号のようなもの。
赤いハートは、特別だから…」
ーー特別だからーー
その言葉だけで家康は満足だった。
みんなと同じものの中に、自分にだけ特別をくれる。
そんな愛が愛おしくて…
「んっ…」
家康は愛に優しく口付ける。
『ありがとう。ねぇ、俺には愛をくれるんでしょ?
ばれんたいん…』
そう言うと、優しかった口付けは何度も何度も落とされ、
だんだん熱を持つ。
角度を変えて、より深く深く…
「んっん…ぁ…まって…家康…」
愛はそう言うと、家康の胸を押し返す。
『駄目なの?まだ…怒ってる?』
あまり見せない家康の不安そうな顔。
子供が泣き出す前みたいな顔。
愛は慌てて首を振る。
「違うの。家康には、ちゃんと贈り物渡したいから…」
そう言うと、先程ほどきかけた包みを手繰り寄せる。