第20章 貴方への愛を紡ぐ日(家康)
「今更…」
(私…可愛くない…)
自分が放った言葉に少し後悔が訪れた。
それでも、引くに引けない愛は、家康の手を振りほどく。
「ごめん。ほんとに疲れてるから、もう行く」
そう言うと、逃げるように自分の部屋へと戻って行った。
取り残された家康は、振りほどかれた手をただ見つめていた。
愛と入れ違いで秀吉が、盛大なため息をこぼす。
『心配して戻って来てみれば…案の定か。
早く追いかけろ。いいのか、このままで』
「いいわけないでしょ…。俺が悪いんですから…」
みんなに当てられた文には、自分の事ばかり書かれていた。
そして、自分が天邪鬼で普段は言えない感謝の言葉がしたためられていたのだから…
『なら、早く行け』
そう言うと秀吉は家康の背中を勢いよく押した。
「うわ!ちょっと…
でも…ありがとうございます」
そう言うと、足早に愛の部屋へと向かう。
『おい!廊下は走るなよ!』
殆ど駆け出している家康に声をかける。
『まぁ…今日だけは大目にみるか』
肩をすくめながらそう言うと、秀吉も広間を再び後にした。