第3章 彼と私の秘密の言葉(三成)
「秀吉さん、お使い終わりました!」
『秀吉さん…視察から戻りましたよ。何か用があるって聞きました。』
2人が秀吉の部屋を訪れる。
煙管を燻らし、書簡に目を通していた秀吉が顔をあげる。
そこには、朝とは打って変わって満面の笑みを溢している愛と、
なぜか目元を赤くしながらも、苦虫を噛み潰したような顔をした家康がいる。
「なんか…不思議な組み合わせだな。
愛、いい事でもあったか?」
愛は嬉しそうに、
「これね、家康さんにお土産、もらったの!」
といって、今もらったばかりの手鏡を秀吉に見せる。
愛の嬉しそうな顔に、秀吉もつられて笑顔になる。
『かわいいじゃないか、愛にぴったりだ。よかったな。
家康も、視察ご苦労だったな。
家康と政宗が行ってくれたお陰で、こっちも明日には全部片付きそうだ。
明日の夜は、ここで皆んなで食事をしよう。』
それを聞いた家康は、
「まさか、用ってそれを言うだけじゃないですよね?」
と訝しる。
『いや、ちょっと視察の結果と照らし合わせたい事があったんだ。
愛は、今日はもうこっちの仕事はいいぞ。
三成がもし忙しいようなら手伝ってやってくれるか?』
愛はちょっとだけ顔を曇らせたが、
心配かけないようにできるだけ笑顔で
「わかりました。」
と答え、その場を後にした。
「愛と三成はなんかあったんですか?」
家康が心配そうに訊く。
『うーん。強いて言えば、〈何もない〉な。』
と言って、秀吉は肩をすくめてみせた。