第20章 貴方への愛を紡ぐ日(家康)
すっかり陽も落ちた頃、信長、光秀、愛が連れ立って城に戻ると、
安土城中がソワソワした雰囲気に包まれていた。
『あ!信長様たちがお戻りになられましたよ!』
女中の一人が声を上げる。
「なんだ、何かあったのか。騒がしいな」
信長が怪訝な顔で訊く。
『今晩は、政宗様が皆さんで夕餉を取りたいとお料理を作ってお待ちです。
女中達も、久しぶり愛様の顔が見られると張り切っていて…
さぁ、もう皆様お待ちかねですよ』
その言葉に、三人は顔を見合わせる。
『ククッ。政宗は流石に耳が早い。
愛が出戻った事を喜んでいるんじゃないか?』
光秀が面白そうに言うと、
「もう!出戻ったわけじゃないです!」
と、愛が頬を膨らませる。
「でも…みんなって…家康もいますよね…」
愛が少し気乗りしない声を出す。
「いいから、さっさと着替えてこい。俺も用意ができたら向かう」
信長はそう言うと天主へと戻って行った。
三人が広間へ着くと、いつもの面々が今か今かと待ち構えている。
家康の機嫌を気にしていたが、そんなに悪そうではない事に愛はホッと胸をなでおろす。
「愛、貴様は俺の隣に来い」
いつもなら家康の隣に座るはずの愛を信長が呼び寄せる。
「はい」
なんの躊躇いもなく答えた愛を見て、
家康は胸がチクリ…いやドクリとするような痛みを覚えた。
「料理が冷めきる前でよかった。ほら、たくさん食えよ」
政宗が信長と愛の前に料理を運ぶ。
「政宗…それ…」
愛の目にはあり得ないものが映った。
政宗の帯に括り付けられ揺れているのは、間違いなく自分が作ったクマたんだった。
「あぁ、これよく出来てるな。今日家臣の奴らにも自慢してやった」
そう言うと、少し悪そうにニヤリと笑う。
何が何だかわからない愛に、
『愛様、ありがとうございます!
お菓子もとても美味しかったですよ』
三成が無邪気な声をあげた。
「ど、どう言う事?」
目を白黒させていると、秀吉も遠くからユラユラとクマたんを掲げて見せた。