第20章 貴方への愛を紡ぐ日(家康)
「なんか、愛から貰ったはずなのに、
結局家康の事しか書いてねーな、この文」
政宗がふと漏らす。
『それだけ、愛様は家康様の事を想ってらっしゃると言う事ですね!』
三成が屈託のない笑顔を向ける。
『家康、お前自分がやらかした事、わかってるよな?』
秀吉が穏やかな声で家康に話しかける。
「はい…わかってます」
愛は居なくても、いつもこんなにみんなの中心にいる。
それが今の家康にはなんだか誇らしい気分にさせた。
そんな愛は、いつもこんなに自分の事を想ってくれた事に気づけたから。
『よし、あとは信長様達が帰ってきたら、渡すだけだな』
秀吉はそう言うと自分の仕事へと戻って行く。
それをきっかけに、政宗と三成も広間を出た。
一人になった家康は、愛の着物を着た人形をそっと懐から出して眺めた。
(ごめん…何も聞かずに愛を傷つけた。
ちゃんと…俺のところに帰ってきてくれるよね…?)
ギュッと握ったクマのぬいぐるみは、
真っ直ぐに家康を見つめている。
(愛はいつも俺だけを見ていてくれたのに…)
そして、自分の人形だけがない事に、チクリと胸を痛めた。
「兎に角…早く帰ってきて…」
そう呟くと、クマたんを再び懐に戻して広間を後にした。