第20章 貴方への愛を紡ぐ日(家康)
信長はふと、何かに気づいたように険しい表情を浮かべた。
『成る程な。家康のお陰で、俺にも今後一切愛からは何も無くなったと言う事だな』
「そ、そこですか?」
『当たり前だ。貴様が何処に住もうが、誰を好こうが、
俺の持ち物な事には変わりない。そう言ったはずだ』
少し拗ねたように言う信長に、愛はクスっと笑いを溢す。
『漸く笑ったのか。少し気には触るが…。
話して気が晴れたか』
愛は少し考える仕草をするが、
「気が晴れる…とまでは。
すぐに帰るつもりはありません」
そうきっぱりと答えた。
『それで、貴様は飛び出して着た割に、
その丁寧に包まれた山吹色の風呂敷を抱えてきたのか』
信長は、愛の後ろに置かれた包みを顎で指す。
「こ、これは…まぁ…。
見られたくなかっただけです!」
『全く。天邪鬼と寝食を共にしているうちに、貴様にも移ったのか。
貴様が何で気が晴れるかはわからんが、明日は俺に付き合え』
「えっ?」
『明日は久しぶりに遠出をして鷹狩りに行く予定だ』
「また…一人で行ったら秀吉さんが怒りますよ?」
『安心しろ。光秀が一緒だ』
「それはそれで、心配しそうですけど…。
でも、私も一緒に行っていいのですか?」
『誰が共に来いと言っているかわかっているのか貴様。
明日は早くに出る。今日はもう早く寝ておけ。
それとも寝れないのなら…』
「い、いえ、結構です。もう寝ます!
今日はずっと縫い物をしていて疲れましたから」
愛は信長の先の言葉を遮るように言う。
『くくっ…そのくらい元気があれば大丈夫だろ。
居たいだけここに居るといい』
そう言うと、信長は満足そうに愛の部屋を去った。