第20章 貴方への愛を紡ぐ日(家康)
その頃、家康の御殿でも秀吉が全てを聴き終わる。
「まぁ…そんな感じですよ」
大きなため息とともに家康が話し終える。
秀吉は未だ苦い顔で、話し終えた家康の頭を軽く小突いた。
「いたっ!何ですか。話せって言うから…」
『お前なぁ。よく考えろ。
愛がそんな小さなもの一つを作るだけで、朝から篭るわけがないだろう…』
やれやれ…という表情を浮かべた秀吉が言う。
「確かに…あの程度なら、愛ならすぐ作り上げるかもしれないですね…」
不機嫌な家康の顔は、だんだん不安を帯びている。
『それに愛はなんて言って部屋を出たって?』
「もう誰にも何もしない。家康にも、もう何もしない…って」
『どう考えても、お前に何かを準備していたって事じゃないのか?』
「あ…」
秀吉の言う通りだと思った。
自分は、自分以外の誰かに夢中になる愛に腹が立っていたのに、
最後は自分にも何もしない…と言った。
『それに、愛が五百年後の知識を広めた事で役に立った事は沢山あっただろう。
安土の祭りにしても、民があんなに喜んだのは目新しいものがあったからだ』
「そこは…わかってますよ。ただ俺は、俺だけに欲しかっただけで…」
『全く…。お前の言葉足らずと天邪鬼は、最早死んでも直らなそうだな…
よし、その三成に作っていたってやつを俺にも確かめさせろ』
「わかりました…勝手に見るのは気が引けますけどね…」
そう言うと二人は愛の作業部屋に移動する。
投げつけた人形が仕舞われた箱の前に腰を下ろすと、
「この中ですよ…」
そう言いながら、家康が蓋をあけた。
『これは…』
「えっ…」
『お前…やっぱりやらかしたな』
そこには、それぞれの武将達の着物を着たクマたんが括り付けられている巾着が丁寧に並べられていた。
秀吉は、巾着に括られていない三成の服を着た人形を手に取ると、まじまじと眺める。
『相変わらず、丁寧な仕事をするな、愛は』
「あれ?」
家康はもう一つ括られていない人形が愛の着物を着ている事に気がついた。
『そういえば…お前の人形がないみたいだな』