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イケメン戦国★センチメンタルLOVE

第20章 貴方への愛を紡ぐ日(家康)


『愛!』


家康は自分の声も届いていない愛に苛立って、
少し声を荒げて呼んだ。



「わぁ!家康!帰ってたの?」


その声に肩をビクっと揺らし、慌てて手元のクマたんを隠して振り返った。



『帰ってたのじゃない。もう何度も呼んでる』


そう言うと、不機嫌なまま愛が隠した物を奪った。


「あ!ちょ、ちょっと!」



『ナニコレ…』


家康の顔が更に不機嫌なものに変わる。
愛が最後に仕上げたクマたんは、紛れもなく三成の着物を纏っていた。


『ねぇ。何これ。コレのために俺の声も聞こえなかったの?
どう言う事?』



「違うの!そ、それは…」



(なんで?夢中になって作ってたのがコレって、何なの一体!)



『何が違うの?三成の事がそんなに気になるなら、
今からでも逢いに行ってくれば?別に帰ってこなくてもいいけど』



(何で愛の中に三成がいるんだよ。よりによってなんで!)



女中に泣きつかれたことも、自分の声が届かなかったことも、
愛が夢中になって作っていたものも、全てが気にくわない。


ーーだから…
俺は冷静になんて居られなかった。
きっと、いつもなら愛の説明をちゃんと聞くはずなのに…ーー


「違うの!家康聞いて?
明日はバレンタインだから…去年は運良く南蛮のチョコレートを分けてもらえたけど、
今年は…」


『ばれんたいん?あぁ、五百年後のいべんとってやつね。
また今年もやるつもり?あんまりあんたの平和ボケをこの時代に持ち込まないでよ』



(覚えてる。ばれんたいんは、愛を伝える日だって…
なんでそれが、コレに繋がるんだよ!)



怒りに任せに投げたそれは、愛の顔を掠めて手元に落ちた。



(あ…)



家康は一瞬ヒヤリとしたが、柔らかいクマたんはポトリと愛の手に収まっている。
愛は、乱暴に手元に戻ってきたクマたんをじっと見つめて何も言わない。



『愛…』


「わかった」


家康の言葉を遮るように、静かな声が響く。


「もう誰にも何もしない。家康にも、もう何もしない」


そう言うと、クマたんを道具入れに仕舞い、
家康と一度も目を合わせることなく愛は部屋を出たのだった。

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