第19章 あの星空の彼方に(謙信)
オマケ
「何を朝から騒いでいるのだ」
信玄の部屋に呼ばれて行けば、幸村と佐助も揃い朝から騒がしい。
『謙信様、おはようございます。
今、今年の初夢について話していました』
「相変わらずくだらん」
『幸村は、信玄様の甘味を取り上げたら、
巨大な栗饅頭と化した信玄様が追いかけてくるという
スリリングな夢を見たそうです』
『なんだよ、すりりんぐって…
つーか、もう俺の夢の話に触れんじゃねぇ』
幸村は盛大なため息と共に言い捨てた。
『俺は月から来たという可愛らしい猫が
布団に潜り込んでくる夢だったよ。
あの温もりは夢とは言い難かったなぁ。
佐助はどんな夢だったんだい?』
信玄が愉快そうに話すと佐助に振る。
『俺は、新年早々、謙信様の不意打ちに打ち勝つ夢を見ました。
今年はやられっぱなしじゃ無いと言う暗示かもしれません』
無表情の中にドヤ顔を浮かべ佐助が言う。
『謙信様は、初夢見られましたか?』
佐助が好奇の目で謙信を見ると、途端に不機嫌な顔が帰ってきた。
「ほぉ。それでは、お前が正夢だったか、俺が正夢だったか試そうではないか」
謙信は静かに刀を抜く。
『えっ…』
目を丸くする佐助を見据え、刀を構えた。
『謙信…一体どんな夢を見たんだ…
まぁなんとなくわかるような気がするが…』
信玄が呆れたような声を出した。
『佐助が宇宙物理学とやらを習うきっかけを聞き、
即座に切り捨てる夢だ』
『は?』
『え…いや…』
幸村と信玄は全くわからない顔をし、
佐助は珍しく焦りを見せる。
『そ、それは、きっと途中まで正夢…
いや、逆夢な事を願います!』
ーーボンっーー
言うが早いか、大きな音がして煙と共に佐助が消えた。
『ゲホッゲホッ…佐助!
部屋ん中で道具使うんじゃねぇ!!』
幸村が辺りを見回すと、そこには謙信の姿も無かった。
『あーあ。今年も春日山城は平常運転てとこだな。
さて、俺は天女の初夢でも聞きながら、お茶でも飲んでくる』
信玄はそう言うと、懐から菓子を取り出しウインクして部屋を出た。
『あーー!こら!信玄様!!まだ隠し持ってるんですか!!』
今年も春日山城は、どうやら平和なようである…
オマケ 終