第19章 あの星空の彼方に(謙信)
頭を下げる愛を見れば、その後ろで煌々と輝く月が映る。
はらりと落ちた下ろした髪に反射し、まるで愛自信が輝いているように見えた。
謙信は思わず愛に駆け寄ると、その身体を抱きしめた。
確認したかったのだ。今、ここにちゃんと愛しい人が存在していることを。
驚く愛も、スっと笑みを携え消えた部下も、
今は関係なかった。
兎に角、この温もりが本物だと確かめたかった。
「謙信、様…」
(愛……お前はここにいるのだな……)
「どこにも、行ってくれるな…」
返事を聞くのが怖い…。
その想いからか、謙信の声は酷く掠れた。
けれど、そこへ返ってきた言葉は、
想像以上に優しい声色だった。
「どうしたんですか、何処にも行きません、
私はここにいますよ?遅くなってすみませんでした」
そう言いながら、自分を優しく抱きしめ返してくれた。
その手は優しく背中を撫ぜる。
それだけで、謙信の心は落ち着きを取り戻し、
そして穏やかになっていく。
(あぁ、そうだ…。
この女は俺を置いて何処にも行くはずないのだ…)