第3章 彼と私の秘密の言葉(三成)
朝、三成は自室で政宗の作った朝餉をたべていた。
「はぁ……」
大きなため息をつきながら。
秀吉様が急な政務で忙しくなって、愛様がお手伝いにいらっしゃいました。
なんだか、凄く緊張してしまいますね…。
先日、秀吉様に相談したら、その気持ちは【恋】だと言うのです。
私は愛様に恋してしまった…。
でも、本当に【恋】なんていう爽やかな感情なのでしょうか。
最初の三日は、愛様が私の部屋を訪れて、
お茶やお菓子を置いていってくれましたが、最初全く気づかなかった私は
その存在に気づいた後も、恥ずかしながら、お礼の一つも緊張して言えず、
結局気づかないふりをしてやり過ごしてしまいました。
次の二日は、愛様は私の部屋には来て下さいませんでした。
朝、秀吉様のお部屋に挨拶される声も、
廊下からは女中と話している声も、ちゃんと聴こえました。
いらっしゃったのは間違いありません。
来てくださったのに、一言も声をかけられなかった私は嫌われたのでしょうか。
でも、まさかこんなに苦しいものとは思いもしませんでした。
あなたが側にいるのに、会いに来てくださらない事が、
こんなにも苦しいなんて…。
そして、今日。
何があったのでしょう。
私は全て見てしまいました。
と、いうより、見えてしまったが正しいでしょう。
だって、秀吉様は襖を閉めるわけでもなく、
廊下を気にするわけでもなく…。
愛様の涙を拭い、その胸に抱きしめておられました…。
なぜ愛様は泣いていたのでしょう。
会話は聴こえませんでしたから、、、
でも、この悍ましいほどの、腹の底から湧くような
ドロドロとして胸が苦しい黒い感情は、一体何なんでしょう。
本当に【恋】とはこの様なものでしょうか。
私が文献で読んできたものは、もっと色めき立ち、
輝きのあるものだったと記憶しているのですが…。
『お前、誰と話してるんだ?』