第3章 彼と私の秘密の言葉(三成)
愛が、秀吉から頼まれた用事を足しに
秀吉の部屋から出て行くと、
入れ替わりで光秀が、クククっ…と笑いながら入ってくる。
「兄貴という立ち回りは、時にこんなにも残酷なものか…くくっ」
朝から良いものを見たと言わんばかりに、
笑いを堪えられないでいる光秀を、
ムッとしながら睨みつける秀吉。
『なんだ光秀。用があるなら、さっさと言え。
だいたい、何がそんなに可笑しいんだ。』
「ククク…っ。そう怒るな、秀吉。
俺だって、三成が愛を泣かせたとあっては、
苛立ちを覚える。兄としてではないがな…クックク…」
更に笑いを堪えられなくなった光秀は、
懐から、折りたたまれた文の様なものを
笑いながら、秀吉に渡し、
「お前に頼まれていたものを持ってきただけだ。
じゃぁな…。」
とニヤニヤしたまま出て行った。
『なんだったんだ…!』
溜息混じりの怒りの声をあげた。
確かに、光秀がいう事は、ことの本質を突き過ぎていた。
三成も愛も、自分にとっては大いに構い甲斐のある
かわいい弟と妹だ。いや、弟と妹だった。
それが、いつしか愛が三成に惹かれていくのを
目の当たりにし、
三成も愛に対し、彼曰く
「わからない感情」の相談を秀吉にしてきた。
「なんだ、もう2人は相思相愛じゃないか…。」
そう笑って口に出した時に、何かが身体の奥を
【ズキっ】と貫いた。
(あぁ…、俺も相当に鈍感だったのか…)
その気持ちは全て【兄】という損な役回りで隠してきた。
ただ、弟が妹を泣かしてるのを見て、
黙っていられるわけもない。
(三成…これは…男としての勝負だ!)