第3章 彼と私の秘密の言葉(三成)
「もう、やだなぁ、秀吉さんたら…。
心にもない事言わないでよー。」
と、肩をすくめて秀吉を見ながら笑う愛を見て、
(お前も十分に鈍感なんだけどなぁ…。)
と、心の中で溜息をついた。
「秀吉さん、心配かけてごめんね?
私のために、そんな暗い顔しないで!
安土一のイケメンがすたるぞっ!」
急に戯けた声で秀吉にそう言うと、
愛は秀吉の頬っぺたを、ツンツンと人差し指で突く。
『なっ…!』
かーっと触られた頬の熱が上がるのがわかり、
悟られないように慌てて言葉をかえす。
『お前なー。暗い顔してるのはどっちだ!
もういいから、訳わからん事言って…
俺に無理して笑うな。』
そう言いながら、愛の頬に触れながら、
あいている手は、頭をポンポンと軽く叩く。
「…っ。そんなに優しくされたら、
我慢できなくなる…。」
ぽたっ…。
大粒の涙が頬を伝ずに、俯いた愛の目から
直接畳に落ちた。
『泣くなよ、愛。顔上げろ。』
そう言うと愛の顎をクイっと持ち上げる。
「今は忙しいだけだから。もう少し待て…。』
そう、優しく微笑む。
「うん…」
そう言う愛の目は潤んでいて、自分が顎を上げたせいで、
上目遣いで見つめられるように見えてドキっとした。
(くそっ…三成、お前を裏切るわけじゃないからな!)
愛の顔をできるだけ見ないように、
秀吉は天井を見上げながら、愛をギュッと胸に抱き締め、
背中をさする。
(三成ぃ〜〜!!!)
本当は動揺している事を悟られないように
できるだけ余裕を残した声で、
『落ち着いたか?』
と話しかける。
「うん…秀吉さんごめんね?
秀吉さんも忙しいのに、朝から時間取っちゃって…。」
『お前はそんな事気にしなくていい。
辛い事があったら、いつでも俺に言いに来い。』
「ありがとう!秀吉さん、本当にお兄ちゃんみたい!」
笑顔になって、顔をあげ、そういう愛を見て、
秀吉は苦笑いする。
『可愛い妹を泣かせる、悪い男は
しっかりわからせないと駄目だな…』
秀吉は、なにか言いようのない苛立ちをが
ふつふつと湧き上がるのを必死に押さえつけようとしていた。