第18章 くりすますをあなたと(三成)
ついに明日ですね…佐助殿と愛様が《くりすます》をなさるのは。
愛様を信用している事に嘘はありませんが、
お二人で会われるというのは、気になってしまいます…
やはり、ご一緒すると言えば良かったでしょうか…
三成が愛と佐助の約束を思い出しながら安土城の廊下を歩いていると、
前から信長と政宗が歩いて来る。
『三成、ちょうど良いところで会った』
信長が声をかけても、三成は何か考え事をしているようで、
ずっと目線を落としたまま歩いている。
『おい!三成!』
政宗が通り過ぎようとする三成の肩を掴み声をかける。
「え?政宗さん?
あっ、信長様も…どうかされたのですか?」
今初めて気づいたような三成の態度に、二人は顔を見合わせて呆れている。
『お前、信長様の声も届いていないなんて、
何をそんなに考えながら歩いてんだよ』
政宗の言葉を聞き、漸く声をかけられていた事を知る。
『何か気にかかる事でもあるのか』
いつもの事といえば、そうなのだが、
戦も起こっていない今、三成が何に思案しているのかを気にした信長は、
少し面白そうに声をかけた。
「大変失礼致しました。
いえ、大した事ではありませんので。
それより私に何か御用でしたか?」
いつも通りの三成に戻ったのを二人はどこか残念そうな顔をしながら見つめる。
『明日だが、朝餉のあと、愛を謁見に参加させたい』
「えっ?明日ですか?
明日は…昼過ぎから愛様はご用事が…」
三成が珍しく動揺を見せたのを、政宗は見逃さなかった。
『へぇ、もう年内は急ぎの仕事はないと聞いていたが、
急ぎの何かが入ったのか?』
「いえ、お仕事ではありませんが…」
『ならば問題ない。正午までには終わる。
三成、お前も居合わせても良いぞ』
信長が言う。
「申し訳ございません。私は明日は朝から秀吉様のお供で、
別の仕事が入っておりまして…。
ところで、何故、愛様を?」
『明日、西洋からの宣教師が何か信長様に頼みがあって来るそうだ。
こっちの言葉は片言のようだから、念のため、愛に通訳としていて欲しいらしい』
政宗が答える。
(西洋の…。確かに、愛様なら多少はわかるのかもしれないな…)