第18章 くりすますをあなたと(三成)
『おい、三成』
ある日、御殿に戻ると、廊下から歩いてきた政宗に声をかけられた。
「政宗様!いらっしゃってたのですか?」
『おう。久しぶりに愛の顔でも拝もうかと思ってきてみたんだが、
あいつまだ帰ってないんだよ』
「愛様は、お仕事で着物を届けに城下に行っているはずですよ。
でも、もうすぐ夕刻ですから、時期に戻るでしょう」
三成はエンジェルスマイルで政宗に笑いかける。
『お前たち、本当に一緒に暮らしてるんだな…』
「そうですが、なにか…?」
キョトンとする三成をまじまじと眺めて、政宗はフッと笑みをこぼす。
『いや、お前の寝癖も久しく見てないなと思っただけだ』
「あぁ。愛様が毎朝直してくだいますからね」
再びのエンジェルスマイルに、今度は小さくため息をつくと、
『まぁいい。せっかく来たから、夕餉でも作ってやるよ』
「宜しいんですか?きっと愛様も喜びますよ。
帰ってから準備をするのは大変でしょうし」
その言葉に今度は驚きながら、
『あいつがいつも作ってるのか?』
と目を丸くする。
「はい。おかげで、人参も食べられるようになりました」
『それは楽しみだな。じゃあ今日は人参の宴でもするか!』
「い、いや、それは…」
『はははっ、冗談だ。あ、そうだ、愛宛の文を預かってるぞ』
そういうと、懐から一通の文を取り出し、
三成に渡す。
『それ、変わった紙だな。あまり見たことがない材質だ』
政宗からの文を見て、三成の動きが一瞬固まる。
『どうした』
「いえ、、これは、佐助殿からの文ですね」
『佐助だと?なんと書いてある』
文を奪おうとする政宗をさっとかわすと、
「いけません。愛様宛の文を盗み見るなど!」
『なんでだよ、敵の忍びからだぞ?』
「いいえ、愛様のご友人です」
『気にならないのかよ…』
「気には…なりますけど…」
一瞬の三成の隙をついて、政宗が文を奪い、
あっという間に開けてしまった。
「あ!政宗様!」
『なになに?なんだこの謎の文字は…忍びの暗号か?』