第18章 くりすますをあなたと(三成)
『三成くん、今日はありがとう』
佐助が帰り、寝る準備が整うと、愛が改まって三成に礼を言う。
「私は何も。愛様が楽しそうでしたし、
またお招きしてはいかがですか?」
三成は当たり前のように言う。
『三成くん…』
愛は、三成にギュッと抱きつく。
『大好きだよ、三成くん。
本当に、三成くんを好きになって良かった…
凄く幸せだよ』
愛様…本当に可愛らしい人ですね。
私もあなたと想いが通じる事ができて良かった…
「愛様…今日はとても積極的ですね。ふふふ」
貴女のこの綺麗な髪も、その可愛らしい笑顔も、全部私のものです。
この、唇も…
『んんっ…』
「佐助殿と、何かお約束をしているのですか?」
口づけを離すと、不意に三成が訊く。
愛は少し焦ったように、
『う、うん。今度、く…あ、いや、お茶屋さんでお団子食べようって。
駄目…かな…?』
私が駄目と言ったら行かないつもりなんですね、貴女は。
でもそんな事は言いません。
《くりすます》を私はしてあげられませんから…
でも…
「今、くって言いました?」
『あ、えっと…クリ…饅頭美味しいからって…』
いいんですよ、そんな無理をしなくても…
「くりすます…」
『えっ?』
「いえ、佐助殿だったら、この前愛様が言った《くりすます》を知っているのでは…と」
ごめんなさい、本当は聞いていたから。
でも貴女の口から本当の事を…
『覚えてたんだ?!
うんそうだね。佐助くんは知ってる。けど、
別に、クリスマスってそんなに大したものじゃないから。
お茶屋さんに行くのも本当だよ?
よかったら、三成くんも一緒に行く?』
「えっ?宜しいんですか?」
『うん。でも、ほら、外で一緒にいたら色々まずいかなって思ってるだけで…』
「確かにそうですね。安土の中で人に見られるのは良くないかもしれません。
私の事は気にせず、行ってきて下さい」
そうか、《くりすます》というのは、そんなに特別なものではないのですね。
私が勘ぐりすぎたようです。佐助殿なら、きっと大丈夫でしょう…。