第18章 くりすますをあなたと(三成)
佐助を囲んで始まった夕餉は、とても和やかに進んでいた。
三成と佐助は、忍びの道具について花を咲かせていて、
それを幸せそうな笑顔で愛が聞いている。
『二人が友達のようになってくれて、嬉しいな』
ふと愛が口にする。
「そんな、俺と三成さんが友達なんて、恐れ多い事だよ。
俺は三成さんのことを武将としてとても尊敬しているんだ」
真面目な顔で佐助が言うと、
「いえ、愛様のご友人は私にとっても同じです。
そんなに尊敬されるような人間ではありませんよ、私は」
三成が柔らかく笑う。
「今はたまたま、敵対する立場なだけです。
いつか平和な日ノ本が訪れた時は、是非私を友達と言って頂きたいです」
三成の言葉に佐助は感動して固まっている。
それを見ながら愛はまた嬉しそうに笑う。
『佐助君、三成くんはこういう人なの。
だから、心の中では友達でいてあげてね』
「こんなに嬉しい事はない。幸村とはズッ友だと思っているけど、
三成さんに友達と言ってもらえる日くるなんて…
愛さんは、本当に良い人と一緒になったね。
俺も嬉しい」
『三成くん、佐助君今、凄く嬉しい顔してるからね。
分かりづらいかもしれないけど』
無表情に見えますが、愛様にはわかるのですね。
佐助殿の些細な表情の変化が。
佐助殿にこう言って頂いて、
嬉しいはずなのに…なぜモヤモヤするのでしょう…
そんな気持ちを隠しながら、三成は笑顔で頷く。
心のどこかでずっと《くりすます》を引きづりながら…
「今日は本当に楽しかったです。お招きありがとうございました」
玄関口で、佐助が丁寧に頭を下げる。
『本当に泊まっていかないの?』
「そんなにお世話になったら、謙信様にバレた時に何されるかわからないから。
でも、ありがとう」
佐助は、これ以上三成に世話になっては、
謙信に追い回され根掘り葉掘り聞き出され、大変な思いをするだろうと苦笑いを浮かべる。
「じゃあ、愛さん、また日にちを連絡するから」
『うん。楽しみにしてるね!幸村にもよろしくね』
そうして佐助は三成の御殿を後にした。