第17章 我儘に甘えて(秀吉)
秀吉は少しだけ苦笑いをすると、
『言いたいことあったら、素直に言っていいんだぞ?』
そう言って愛の顔を覗き込む。
「え?」
驚いて顔を見上げると、
『どれだけ寂しい想いをさせてるかはわかってるつもりだ。
無理しないで、思ったこと言ってくれていいんだ』
と、愛の頬を優しく撫でた。
「うん…じゃあ…。
いつも、忙しいのに、私の事一番に想ってくれてありがとう!」
愛の言葉に、秀吉は目を見張る。
どんなお小言が飛び出すかと思えば、
自分への感謝の言葉が紡がれたからだ。
『ふっ…。お前は本当にいい女だな。
こんなにいい女、ほったらかしにするわけにはいかない。
早く終わらせるようにするから、もう少し待っててくれ』
そう言うと、愛の頭をポンポンと撫でて、
秀吉は安土城へと向かった。
「はぁ…。
言えるわけないでしょ、寂しいなんて。
秀吉さんはいつでも私を一番に想ってくれているんだもの」
そう呟くと、愛は再び家康の羽織を直しにかかる。
さっきまで包まれていた秀吉の香りは、
目の前の家康の羽織から漂う香りで打ち消され、
なんとも言えなく切ない気持ちが心を満たした。