第2章 特別な人(秀吉)
オマケ
後日、秀吉の御殿に三成は書簡を確認しに訪れていた。
「三成、お前今日新しい羽織を着ているな。
いいじゃないか、似合ってるぞ。」
秀吉が話かけるが、三成は遠くを見ている。
かと思うと、たまに1人でクスクス笑っている。
「お、おい、三成、さっきから何だか上の空だな。」
はぁ……
(今度はため息?どうした?)
三成は書簡に目を落としているものの、
今日何度目かの溜息をつき、秀吉の言葉は届かない。
「おい!
おい、三成!!」
肩を揺さぶられ、漸く呼ばれていることに気づく。
『あ、すみません、秀吉様、お呼びでしょうか?』
「呼んでなかったら、こんなに揺さぶらんだろう。
新しい羽織だなって言ったんだ。
お前、今日はどうした?体調でも悪いのか?」
心配そうに三成を眺める。
『この羽織は、先日のお礼と、愛様が仕立ててくださいました。
愛様がいつも一緒にいるみたいで、とても嬉しいです。』
眩しいくらいのエンジェルスマイルを秀吉に向ける。
「そ、そうか。よかったな。で、体調悪いのか?」
『はい…実は…。』
言いづらそうに言い淀む。
「なんだ、言ってみろ。」
『先日、秀吉様の代わりに愛様と城下に出かけてからというもの、
毎晩夢に愛様が現れるのです…。
あの日繋いだ手の温もりなども鮮明で…。
朝起きると、いつも胸が痛むのです。
今朝も、こちらに参る際に、お城に戻られる愛様とご挨拶いたしましたが、
今まで秀吉様と過ごされたのかとおもうだけで、
今まで感じた事のないような、怒りとも哀しみとも言えぬ感情が胸に押し寄せてくるのです。
やはり、家康様に相談して、なにか薬を頂いた方が宜しいのでしょうか…』
そこまで聞いて、秀吉は驚きを隠せなかった。
自分の代わりに愛のところへ行かせる役を三成に頼んだのは、
三成以外はみな愛に好意を寄せている事を知っていたからだ。
今、三成は自分の感情が何なのかわかっていないようだが…。