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イケメン戦国★センチメンタルLOVE

第16章 織物のように(三成)


煮物の器を三成に差し出そうと手を出すと、
その手をそっと抑えられた。


「ん?いらないの…?え?」


見上げた三成は、笑みを携えたまま口を開けていた。


「え?え?」


『食べたいです』


そう言うと、再び三成が口を開ける。


(これは…食べさせて…ということ…だよね…)


あーん、と口を開けている三成の口に
そっと人参を取ると、左手を添えて差し出す。


パクっと人参を口に入れると、美味しそうに咀嚼している。



『やっぱり、愛様の作った人参料理は、
全く嫌じゃありません』


差し出した愛が、顔を真っ赤にしているのを気にもとめずに、
嬉しそうに食事を進める三成。


お月見の夕餉は、甘くゆるやかに流れる時間の中で進んでいく。










『ほらな、言わんこっちゃない』


庭の片隅から政宗が笑いを堪えながら言う。

秀吉は、目の前の光景が夢じゃないかと思うほど
固まったまま見ていた。


「三成が…書物も読まず…しかも人参を食べている…。
何が…どうなった…」


自分が持ってきた書物は、今までの三成なら一目散に読みふけり、
読破するまで絶対に部屋から出なかったであろうものだ。

『だからあいつは、俺たちが思うよりもずっと変わったんだ。
一端に、嫉妬も物凄いもんだぞ。秀吉も気をつけろよ?』


政宗は心の底愉快だという顔をしている。



「ま、まぁ…、どちらも良い方に変わっているようで良かったが…
え?嫉妬?」


政宗の言葉を怪訝そうに振り返る。


『手っ取り早く見たければ、愛の頭でも撫でてやれ。
刀を抜きそうな程の殺気を出す三成が見れるぞ』


その言葉に、昼間の事を思い出す。
あの時は、愛の嬉しそうな顔を見ていたせいで、
三成がどんな表情をしていたか見てなかった。

「まさか…な」


『ま、あいつも男になったって事を忘れないでおく事だな。
いつまでも可愛い弟分じゃない。気をつけろよ』


政宗は秀吉の肩をポンと叩くと踵を返す。
秀吉も、一先ずは愛が悲しまなくて良かった、とそれに続いた。



(妹だけじゃなく、弟離れまでいっぺんにくるのか…)


そんな事を考えながら。
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