第15章 勝手な我儘(政宗)
愛は御殿に着くと、政宗の着物を仕上げていた。
市場で買い物をして帰ると、手伝うと言う愛の申し出を、
『お前はまだやることあるんだろ』
と、何も言っていないのに政宗が断ったからだ。
(ほんと、政宗には何でもお見通しなんだよね…)
大好きな人を想って、ひと針ひと針に気持ちを込める。
「よし!できた!政宗に似合うといいな」
『夕餉の用意ができたぞ』
ちょうどのタイミングで政宗が戻ってくる。
『ん?お前も終わったのか?』
愛が着物を掲げているのを見ると、政宗が近寄ってくる。
「うん!ちょうど良かった。羽織ってもらっていい?」
『え?これ俺のか?』
依頼品を作っていると思っていた政宗は、
愛の言葉に目を見開く。
「うん。昨日着物整理してたら、少し古くなってるのが多かったから。
良かったら着てね」
そう言って立ち上がると、政宗にふわりと着物を羽織らせる。
「丈もちょうどいいし…、うん。思った通り政宗に似合う!」
『毎度のことながら、お前の仕立てる着物は着心地が抜群だ』
政宗も顔を綻ばせて、愛の頭を撫でた。
『よし、明日は早速これを着ることにしよう』
「え?そんな無理に着なくていいんだよ?
政宗の好きな時に着てくれれば…」
『好きな時に着ていいなら、やっぱり明日だな。
明日は、奥州から親しい奴らが来ることになってる。
自慢してやるにはちょうどいいだろ?』
「うふふ…ありがとう」
『なんで、作ったお前が礼を言うんだ?』
「え?あぁ…たしかに。でも、そう思ったから!
政宗が着てくれると嬉しいから」
そう言って、そっと着物を取ると、丁寧に畳む。
『相変わらず変な奴だな。ありがとな。
さ、飯食うぞ。今度は俺の番だな』
キョトンとする愛の手を引き、部屋を出た。