第15章 勝手な我儘(政宗)
「政宗!ど、どうしたの?」
(やだ!聞かれてたかな…)
『政宗様!愛様をお迎えですか?』
「お迎えって…今来たばかりですよ、私は」
愛が笑いながら答える。
「愛、これ。
作りすぎたから持って来た」
そう言って渡された重箱には、綺麗に並んだ大福餅入っている。
「わぁ!美味しそう!わざわざ持って来てくれてありがとう!」
(やっぱりこいつの笑顔はいいな…)
「じゃあ、俺はもう行くから。
今日は早く終わるんだろ?
帰り、城の俺の部屋に寄れ。待ってるから」
そう言うと、政宗は踵を返す。
『愛様、愛されてますね〜!
わざわざ差し入れを持って来てくださるなんて』
針子達が口々にもてはやす。
「あはは、違いますよ、きっと。
これは、私にだけじゃなくて、皆さんにもです」
『え?』
「昨日、クタクタで帰って、皆さんと仕事やり遂げたことを伝えたから、
政宗なりの針子みんなへのご褒美ですね」
ニコニコと話す愛に、先ほど南瓜の件を愚痴っていた針子がぽそっと呟いた。
『私…もしかして、ちゃんとあの人を見てないのかな…』
「ふふふ…、ご主人はちゃんと愛してくれていると思いますよ。
さて、まだ何にもしてないですけど、お茶淹れましょうか」
『あ、でしたら私が淹れて来ます!』
そう言うと、足取りも軽く立ち上がっていった。
(政宗、今日が暇だってわかってて、ゆっくり食べられる大福作ってくれたんだろうな。
いつもなら、お粉が付くのは食べられないから…)
政宗の気持ちが沢山詰まったお重を眺めて、
愛は笑みを溢さずにはいられなかった。