第2章 特別な人(秀吉)
「特別な人としか出来ないことを、私はしたい……。」
最後の一言は消え入るような声。
でもしっかりと秀吉には聞こえた。
愛が言い終わると同時に、秀吉は後ろからギュッと抱きしめた。
『ごめん愛…』
抱きしめて、肩に顎を乗せる。
『そうだな。
愛を抱きしめていいのは俺だけだ。
愛に口づけしていいのも俺だけだ。
愛を抱いていいのも俺だけだ…。
愛が特別だから、愛にしかしない事だらけだ。
こんな事にも気づかないなんて、俺は馬鹿だな。』
そう言うと、愛の手を引き、自分の方を向かせる。
溢れている涙を指で拭うと、涙の跡をなぞるように口付けを落とす。
それは何度も何度も繰り返され、熱を持った唇にも落とされる。
少し開いた唇から舌先を滑り込ませ、深い口づけをする。
「ん…」
角度を変えて、愛を確かめるように、
優しく、深く、水音を響かせて口づけをする。
「はぁ…ん…」
愛からも吐息が漏れ始める。
時間を取り戻すように何度も何度も繰り返される口づけに、
愛の目は、とろんと溶け始める。
チュッ…
透明に光糸をひきづらせ、
音を立てて、2人の唇が離れる。
その糸を親指で拭い、愛の唇を優しくなぞる秀吉。
『こんな事するのは、特別な愛にだけだ…。』
「秀吉さん…ずっとこういう逢瀬がしたかった。私…」
『…っ!お前…そんな可愛い事言うな…!』
目の下をほのかに赤らめて秀吉が愛の頭を抱きしめ自分の胸に押し付ける。
「秀吉さんの心臓、ドキドキしてる。」
胸に耳を押し当てた愛が囁く。
『当たり前だ。俺は愛といると、手を握っただけで心臓が破裂しそうなくらいだ。
特別なやつにしか、反応しないよ、俺の心臓は。』
「うん。」
にっこり笑ってそのまま秀吉をギューっと抱きしめる。