第14章 あなたへの恋文(家康)
「家康、大儀であった」
広間には信長の通る声が響く。
その周りには、秀吉、光秀、政宗、三成が揃う。
安土に到着し、信長に報告するために広間に入った家康は、
知らず知らずのうちに愛の姿を探す。
『愛ならいないぞ』
意地悪な笑みを携えながら政宗が家康の肩を叩く。
「別に…そう言うんじゃないです」
不機嫌そうに答える家康に、
『素直じゃないな。一番に逢いたかったくせに』
政宗は揶揄い続ける。
素直じゃないな…
そうだった。もう天邪鬼はやめる。そう思って帰ってきたんだ。
『そうですよ。早く逢いたいから、早く解放してもらえます?』
その言葉に、秀吉と信長が微笑む。
「少しは素直になったじゃないか。
ほら、なら早く報告を済ませ」
そう促されて信長の前で状況を報告する。
目の前には、統治してきた国の塗り物の食器や膳が並ぶ。
「しかし、この塗り物は素晴らしい。
よく見逃さずに産業として復活させたな。
安土城の食器を全てこれに変えさせた」
信長が碗を片手に家康を見る。
「後処理を押し付けてきて悪かったな。
向こうの大名から、素晴らしい手腕だったと礼の書状も届いてる」
秀吉が、嬉しそうに家康に話す。
「書状と言えば…家康、お前帰ってきて早々だが、
御殿に大量の書状が届いてる。今日中に返答を終わらせろよ」
政宗が面白そうに言うと
『冗談じゃないですよ。ここまでほっといたなら急ぎじゃないでしょう。
こっちはゆっくり…』
家康の不満を遮るように、信長の声が響く。
「家康。家臣よりの報告で、貴様が休みなく働いていたと聞いている。
今日から三日間暇をやる。せいぜいその書状の整理に使うんだな」
『ちょ…そんなにかかるほどあるんですか?
だったら向こうに届けてくれても…』
「あぁ、あの量は凄かったな。
でも、どれもこれも急ぎのものだ。帰ったらすぐに確認しろよ」
秀吉も笑いながら加担する。
『はぁ…わかりましたよ。
それじゃあ、もうそろそろ御殿に戻っていいですか?』
「あぁ。せいぜい頑張る事だな」
信長の悪い笑みがかけられる。