第14章 あなたへの恋文(家康)
その朝、愛はいつものように仕上がった着物を丁寧に包み、
城下へと向かう準備をしていた。
「あ、その前に信長様に頼まれていたお直しも持って行こう」
数日前に羽織の綻びを直すように頼まれていた。
全ての準備をして、鏡に向かう。
最近の愛が必ずしている事。
「よし。きっと大丈夫」
たまにお城にいれば、政宗や秀吉いつも心配する。
顔色が良くないぞ。
また夜更かししてただろ。
ちゃんと飯は食ってるのか。
だから、普段はあまりしない化粧をして、
その下にある疲れを隠す。
無事に信長を訪れれば、今日は何だか機嫌がいつもより良いようだった。
『愛か。早かったな。
秀吉たちが知ったらまた心配しそうだな』
そう言って笑っている。
「何でですか?」
顔色は大丈夫なはずだ。
『こんなに早く仕上げたら、また徹夜していたのだろう?』
そこか…
少しはにかみながら、
「そんな事ないですよ、このくらいなら、
時間かかりすぎたくらいです」
そう言って天守を後にする。
包みを持って城下へと急ぐ。
(これを届けたら、ひと段落ついちゃうな…)
ホッとするような、この先の紛らわし方がわからくなるような…
複雑な気持ちで納品に向かう。
『愛』
城下を歩いていると、前から政宗が歩いてくる。
「あれ?政宗、今日は早いね。
軍議お昼からでしょ?」
すると政宗はニヤッと顔を綻ばせる。
『そうだな。まぁ今日はちょっと早く行って先に揶揄ってやらないといけないからな』
キョトンとする愛を見て、ククッと笑う。
『お前は仕事か?』
「うん。でもこれ納めたら暇になっちゃうんだよね…
あ!政宗なんか綻びとかあったら受けるよ?」
そう言う愛に、
『大丈夫だ。
お前はこれから時間をかけて直さなきゃいけない綻びがあるからな。
相当大変な仕事だと思うぞ』
そう言うと、楽しそうに手をひらひらと降って去っていく。
「綻び?なんか大きな仕事がくるのかな?」
それはそれでちょうどいいか…
そんな事を思いながら、小走りに歩き出したのだった。