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イケメン戦国★センチメンタルLOVE

第14章 あなたへの恋文(家康)


夜も更けた頃、いつものように愛は一人部屋で縫い物をしていた。
お陰様で、一人の寂しさをある程度紛らわせるほどの注文が入っている。
むしろ、キャパオーバーと思える程の仕事を引き受けていた。

『愛、まだ起きてるのか?』


ふと、襖の外から控えめな声がかかる。



「秀吉さん?」



作業の手を止めて、そっとその襖を開けると、
視察から帰ってきた秀吉が立っていた。



「今日帰ってきたんですか?お疲れ様です」



秀吉が一足先に帰ってくる事は聞いていた。
昼間の軍議によばれ、光秀からその報告は受けていたからだ。
もちろん、家康がまだ帰って来れないことも。



『愛、どうした?お前痩せたんじゃないか?』



秀吉の目には、笑顔で迎えてくれる愛が、
最後に見た時よりも一回り小さくなっているように映る。



「そうかな?そんな事ないと思うけど…。
今お茶いれますね」


そう言って微笑む愛の笑顔にも、
力が無いように見える。


『いいから。気を使うな』



そう言う秀吉を無視して、二人ぶんのお茶を用意する。



「はい、どうぞ」


『あぁ…』


お茶を出され、ふと部屋を見渡すと、
家康の文机には、山のような書状が積まれていた。


『それ、急ぎじゃ無いのか?』


秀吉が目線だけでその書状を指すと、



「急ぎ…渡したいところだけど、大丈夫。
全部家康宛の恋文だよ」


その言葉に目を見張り驚く秀吉。


『こ、恋文って…お前大丈夫なのか?
別に見たく無いものは、その…』


秀吉の動揺を察して、クスクスと笑いだす。


「ふふふ、安心して?
全部私からの恋文だから」



『え?』


弱々しく笑う愛に、全てを察する。


『あぁ、政宗が言ってたアレか…』


「うん。返事よりも大分多くなっちゃったけどね…」


その寂しげな顔に、秀吉は手を伸ばして頭を撫でる。
照れ臭そうに秀吉を見上げる愛は、そっと口を開く。


「後悔してるの…」


『後悔?』


「うん。家康が出発する時、私、意地張っちゃって、
文を渡せなくて…。でも、そこには本当に伝えたいこと書いてたのに」



秀吉には、愛しい人を想うその表情が、本当に美しく映る。
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