第14章 あなたへの恋文(家康)
その知らせは、安土城に残る武将たちに、瞬く間にで伝えられた。
【内定視察中の織田軍に、反旗を翻した小軍が接触】
懸念していた事が本当になってしまった。
十日程で戻るはずの二人の軍が十五日を過ぎても戻らず、
その代わりに付近の斥候からの知らせが届いたのだ。
「三成くん、どうしよう!家康は無事なの?!」
知らせは勿論愛の耳にもすぐさま届く。
知らせに来たのは三成だ。
『ええ。無事なはずですよ。
そのための視察でしたから。
ご説明しますから、愛様もすぐに安土城へ』
いつも通りの顔をした三成に連れられて辿り着いた安土城の天守には、
信長、光秀、政宗がすでに揃っていた。
「来たか、三成、愛」
信長のよく通る声が響く。
しかし、その声は焦った様子もなく落ち着いたものだった。
「よし、はじめろ」
信長の合図で、光秀が斥候からの情報を詳しく伝える。
偵察で行っていた隣国の大名が謀反を起こしたこと。
ただし、隊は小隊で、大掛かりな戦にはなっていない。
そしてその戦いは既に鎮静されつつある…と。
『なるほど。やはり読み通りでしたね。
予想よりも、遥かに戦力としては無いかもしれません』
「家康と秀吉さんは戦っているの?」
愛が心配そうな声で訊く。
『いいや。戦ってないぞ』
政宗が愛の質問にすぐに答えた。
「え?」
『秀吉様と家康様は、もうすでに統治に入っておられます』
「と、統治?ってことは…もう戦はしてないの?」
愛まだ頭が追いつかない。
『実は、この国はずっと隣の国といがみ合っていて、
便宜上どちらも信長様が統治されております。
ですから、どちらかが戦をおこせば、謀反と言うことになりますが、
今回の内偵は、攻められる方の国に秘密裏に入り、
謀反を起こした側の国よりも圧倒的な兵力で迎えるという策だったのです』
「つまり…イケると思って戦を起こしたら、
全く歯が立たない相手になってたっていうこと?」
我ながら何とも稚拙な例えと思ったが、三成は目を輝かせて、
『さすが愛様!その通りですよ』
と答えた。
『まぁ、つまり謀反ありきの視察だったって事だ』
と、政宗が付け加えた。