第14章 あなたへの恋文(家康)
愛は、自分の部屋に戻ると、
堪えていた涙が溢れ出た。
家康は、勝手に誤解し、声を荒げていた。
何も聞かずに。
それでもあの場で何も言わなかったのは、
口を開けば涙が溢れてしまいそうだったから。
家康は自分の涙が嫌いだから、
自分が泣く事を、本当に悲しむから。
渡せなかった文を開いてみる。
そこに書いた自分の言葉が胸に刺さる。
たまには、家康も思った事素直に書いてくださいね
私も、これからはもっともっと素直に気持ちを伝えます
家康と離れるのは本当は寂しいです
あなたが想うよりずっと、あなたの事を愛しています
きっとこの文は渡す事が出来ないだろうな…
そう思うと、涙は枯れる事を知らないかのように次から次へと溢れてくるのだ。
苛立ってたのかな…
忙しそうだったし。
きっと三成くんじゃなかったら、
あんなにならなかったよね…
そうでしょ?家康。
そうだよね?
愛は、家康に渡すはずの文をそっと文箱へしまう。
明日は、朝から信長の命で姫としての謁見があった。
無理を行って見送りだけでも…
そう思ってたけど…迷惑なのかな。
見送れないけど、気をつけて行ってきてね。
心の中でそう言うと、再び涙が溢れてくるのだった。